紹介やWebから相談が来ても、相手が依頼したい業務と自事務所の対応範囲が合わない場合は、案内する内容を見直す必要があります。面談で聞いた希望を、どのように顧問業務と費用の提案へまとめるかを整理したい税理士事務所にも、この記事の進め方が役立ちます。
顧問先獲得では、継続して支援できる対象と業務範囲を決め、紹介元とWebで同じ条件を伝えます。相談後は現在の会計体制と求める支援を確かめ、それを基に事務所と先方の業務分担、費用、開始時期を提案します。未確認事項を解消し、委嘱範囲と報酬を説明して合意してから契約へ進みましょう。
以下では、対象の整理、紹介とWebの案内、初回面談、提案、契約前の確認の順に説明します。
税理士の顧問先獲得に必要な対象と提供範囲
獲得したい顧問先は、業種や事業規模だけでなく、自事務所が継続して提供できる業務を必要とする相手として考えます。受けたい契約の種類を分けたうえで、先方と事務所の業務分担を整理しましょう。
ミロク情報サービスの顧客獲得の解説でも、事務所の経験や得意分野を、対象とする顧問先と提供サービスに結び付けています。業種や規模だけで対象を決めず、その相手が必要とする作業を事務所で引き受けられるかまで考えましょう。
継続顧問と単発業務の区別
増やしたい契約が継続顧問なのか、特定の申告などを行う単発業務なのかを分けます。TKCの顧問契約書と報酬規定の解説は、継続的な顧問契約とスポット契約を区別しています。
自事務所でも、継続顧問として受ける業務、単発で受ける業務、対応しない業務を整理して、それぞれの案内を用意しましょう。相続や確定申告の相談でも、実際に何を依頼されるかによって扱いが変わります。業務名だけで継続契約と決める必要はありません。
獲得状況の記録も、単発の依頼と新規の継続顧問契約を分ける方法を勧めます。継続顧問を増やす活動を振り返るときに、単発業務の相談件数だけで進み具合を判断しないためです。
顧問先と事務所の業務分担
対象を具体化するときは、先方が行う作業と、事務所が引き受ける作業を組み合わせて考えます。たとえば、同じ規模の法人でも、社内担当者が会計ソフトへ入力して事務所に確認を求める場合と、記帳作業から依頼する場合では、必要な支援が異なります。
自事務所の経験と対応体制を踏まえて、入力内容の確認、会計ソフトの操作支援、記帳代行など、どこまで提供するかを定めましょう。相談時にはその分担を仮の条件として伝え、面談で相手の体制を確かめます。
「法人の顧問を受ける」という案内だけでは、先方が入力する前提なのか、経理作業を広く任せられるのかが伝わりません。対象と分担を一緒に整理しておけば、紹介を頼むときにも、Webの顧問サービスを説明するときにも使えます。
紹介とWebでそろえる顧問サービスの案内

紹介元には、どのような事業者の、どのような依頼に対応できるかを伝えます。紹介された相手が見るWebページにも、その対象と業務範囲、相談の手順を載せましょう。
ミロク情報サービスは、紹介依頼で専門分野と対象顧客を具体的に伝える準備と、紹介された人が事務所を調べる場所としてのWebサイトの役割を説明しています。この二つをつなぐために、紹介用の案内と顧問サービスページを照合する方法を勧めます。紹介を介さずWebから相談する相手にも、同じ条件を案内できます。
紹介元へ渡す情報と連絡先
紹介用の案内には、自事務所で定めた対象、継続顧問で提供する範囲、面談方法、確認用のページURL、相談窓口をまとめます。紹介者が詳しい業務説明を代わりに行わなくても、本人が事務所へ確認できる形にしましょう。
以下は、社内で会計入力を行う法人への支援を受け付けると仮定した文例です。実際に提供できる内容と面談方法に置き換えて使います。
社内で会計ソフトに入力している法人で、入力内容の確認や数字について継続して相談できる税理士を探している方がいらしたら、こちらの顧問サービスページをご案内ください。対応範囲を確かめたうえで、ご本人から相談窓口へ連絡いただけます。初回面談では現在の経理体制と希望する支援を伺います。
紹介者には決算書や経理資料の収集まで依頼せず、まず本人と事務所が連絡を取れるようにしましょう。詳しい情報は、事務所から本人に確認する進め方を勧めます。
案内を作る際には、紹介謝礼や成果を保証する表現を安易に加えないようにします。日税連の「100の提案」第24項は、虚偽・誇大広告などへの注意と、業務広告に関する細則の確認を挙げています。実際の文面は、所属会の現行規則と照合して担当税理士が確認しましょう。
顧問サービスページの確認事項
ページでは、相談する相手が自分の依頼を受け付けてもらえるか判断できるようにします。事務所の紹介に加え、次の情報を自事務所の実際の提供内容に合わせて載せましょう。
- 対象とする事業者と、受け付ける継続顧問の業務
- 先方が行う入力や資料の準備と、事務所が引き受ける作業
- 表示した費用に含まれる業務と、別途確認する業務や費用
- 相談窓口と、申込み後の面談・提案の流れ
たとえば、紹介者には「社内入力の確認を依頼できる事務所」と伝えている一方で、ページには「経理をすべてお任せください」と書いてあるとします。この案内では、相手が記帳作業も含めて依頼できると受け取る余地があります。実際に引き受ける範囲を確認し、紹介用の文面とページの両方を直します。
料金表を載せる場合も、適用する業務範囲や条件を一緒に示します。担当税理士が現行の料金規定と原稿を照合し、対応外の作業まで含むように読めないか確かめましょう。
ここで整えるのは、顧問業務を相談するための案内です。SEO、地図、広告の選択を検討する場合も、まず案内する対象と提供範囲を決めておけば、掲載する内容をそろえられます。
初回面談で確かめる現状と希望
申込み時には相談理由や連絡先などの概要を受け取り、初回面談で現在の経理体制と求める支援を詳しく確認します。紹介者の説明やフォームの回答は、面談で確認するための出発点として扱いましょう。
TKCの営業活動の解説は、面談前に事務所のWebサイトや紹介資料を案内し、相手の事業情報も確認する準備を勧めています。申込み後は、面談前に自事務所の顧問サービスページや紹介資料を相手へ案内します。相手のWebサイトで事業内容を確認し、分からない点を面談で聞く準備もしておきましょう。
面談は、自事務所が支援できるかを双方で確かめる場として設計します。田中宏明税理士事務所の公開案内にも、初回面談で支援可能性を確認し、契約を強制しない方針が示されています。これは一事務所の例です。フォームの必須項目や面談時間、回数は、自事務所の相談手順に合わせて決めます。
現在の会計体制と求める支援
面談では、現在誰が何をしているかを聞いてから、今後どこを任せたいかを確認します。次のような質問を、相手の回答に合わせて使いましょう。
- 現在の事業内容と、今後予定している事業の変化を教えていただけますか。
- 会計ソフトへの入力と入力内容の確認は、現在どなたが行っていますか。
- 現在の税理士へ依頼している業務と、今回相談しようと思った理由を教えていただけますか。
- 今の作業を任せたいのか、数字の見方や把握する時期を変えたいのか、どこを改善したいですか。
ここからは、社内担当者が会計入力を行う架空のA社を例に考えます。A社が「経理を任せたい」と話しても、すぐに記帳代行を提案せず、入力作業の負担と、数字を確認する際の困りごとを分けて聞きます。
仮に、面談で「社内入力は続けられるが、入力内容に自信がなく、いつ数字を確認できるかも分からない」と分かった場合は、入力内容の確認を依頼したいのか、数字を確認する時期や相談方法を決めたいのかを、本人に確かめます。一方、入力を担当する人がいないなら、記帳作業を誰が担うかから検討する必要があります。
相手の言葉から目的を推測するだけで終えず、整理した内容を本人に確認しましょう。現在の税理士がいる場合も、提供されているサービスと今後の希望を確かめ、前の事務所への批判や未確認の事情を提案の根拠にしないようにします。
追加確認と次回の相談内容
面談の終わりには、提案に使える確認済みの情報と、まだ分からない点を分けて共有します。TKCの解説でも、面談ごとの目的を決め、確認した課題に基づいて次の提案の目的を相手と共有する進め方を示しています。
A社の例なら、社内入力を継続したい意向は確認できても、入力済みの内容や資料のそろい方はまだ見ていないかもしれません。その場合は、確認する資料、受け渡し方法、双方の担当者を決め、「現在の入力を確認したうえで、事務所が行う確認と相談の範囲を提案する」と次の相談目的を伝えます。
希望する業務が自事務所の対応外に当たると分かった場合は、その範囲を説明します。対応できるか未確認の相談なら、確認事項を残して提案を保留します。対象外と、追加確認によって判断できる相談を分けるための運用例であり、すべての事務所に同じ受任基準を当てはめるものではありません。
面談内容を反映する顧問サービスの提案

提案では、面談で分かった課題と希望を相手に確認してから、提供する業務と費用、開始までの準備を説明します。TKCも、聞き取った問題の整理と確認を先に置き、対応策、提供サービス、費用とスケジュールへ進む順序を示しています。
A社について、社内入力を継続できることと、入力後の確認・相談を求めていることが確かめられたら、その希望を業務分担へ落とし込みます。次の表は、決算などの依頼も希望していると確認できた場合を含む、架空の事務所による説明例です。実際の業務、頻度、費用は自事務所の対応内容に合わせて定めます。
面談で確認したこと | 提案する業務 | A社が行うこと | 費用と開始前の確認 |
|---|---|---|---|
社内担当者が入力を継続できる | 入力内容の確認と、必要な修正の案内 | 入力と確認用資料の準備 | 顧問料に含む確認の範囲を示し、入力状況を確認する |
数字を確かめる時期と相談方法を決めたい | 数字を確認する時期と、相談対応の方法を定める | 相談内容を整理し、担当者から連絡する | 対応方法を料金規定と照合し、双方の連絡担当を決める |
決算なども依頼したい | 受ける決算・申告等の業務を明示する | 必要資料を用意する | 月額に含むか別報酬かを示し、担当する期間を確認する |
この表で、確認した希望に対応していない業務があれば、提案へ含める理由を見直します。未確認事項が残る欄は確定したように書かず、誰が何を確認すれば決められるかを添えましょう。
業務内容と費用の対応
費用は、何を引き受ける対価なのかと一緒に説明します。TKCの契約書の解説では、継続契約で業務内容と月次・決算・年末調整などの報酬を定める考え方が示されています。自事務所でも、実際に提供する業務ごとに、顧問料へ含める範囲と別途費用を説明しましょう。
A社への提案なら、社内入力を前提にした確認業務と、事務所が入力作業を引き受ける場合を区別します。役割分担が変わる案を出すときは、双方の作業と対応範囲を示したうえで、自事務所の現行料金規定に基づいて費用を伝えます。案の数を固定したり、相談内容と関係のない業務を加えたりする必要はありません。
日税連の報酬に関する案内は、税理士等の自己責任と説明責任に基づく報酬の算定と、委嘱範囲・報酬額について契約書を締結することを示しています。
開始時期と引継ぎの準備
希望する開始時期と、事務所が実際に業務を始められる時期を照合します。対応範囲への合意だけで開始日を確定せず、必要資料と双方の担当者、連絡方法を提案に含めて確認しましょう。
現在の税理士がいる相手なら、どの期間のどの業務を現在の事務所へ依頼しているか、今回の提案と重ならないかを本人に確認します。A社の決算業務がすでに他事務所へ依頼されている場合は、新しい事務所がいつから何を担当するかを未確認事項として残します。
契約解除の条件や申告期限との関係は、担当税理士が個別に確認して開始条件へ反映します。変更の希望があることだけで、すぐに引継ぎできると案内しないようにしましょう。相手には、開始前に必要な準備と、事務所が確認する事項を分けて伝えます。
顧問契約前の説明と合意内容
契約前には、提案で説明した業務範囲と報酬が、契約書の記載と合っているかを確認します。契約書を渡すだけで終えず、相手が依頼する内容を理解できるように説明しましょう。
日税連の「100の提案」第13項は、ひな形を画一的に使わず、依頼者ごとの事情に即した契約内容を説明することを挙げています。業務範囲、業務ごとの報酬、支払時期と方法、報酬の改定時期などを明らかにする内容です。
A社との契約でも、社内入力を前提とする業務分担、事務所が確認する範囲、決算等の依頼と費用、開始時期を提案資料と照合します。追加業務を依頼したいという話が出たら、その業務を受けるか、費用をどう扱うかを担当税理士が確認し、説明した内容へ反映します。口頭のやり取りだけで、契約の業務範囲が広がったように扱わないようにしましょう。
説明後に質問が残れば、その点を確認してから合意へ進みます。案内、面談、提案で引き継いできた条件を、ここで相手と確かめることが顧問契約への最後の確認になります。
契約を保留する場合の確認事項
提案後すぐに契約しない場合は、未確認事項があるのか、条件を理解したうえで検討しているのかを聞きます。対応外の業務を求められている場合も含め、同じ「保留」として処理せず、次に必要な対応を記録しましょう。
たとえば、A社で社内の入力担当を決める必要があるなら、A社が担当者を確認し、その結果を受けて事務所が分担と開始時期を見直すと伝えます。費用条件を検討しているなら、疑問点と、次に連絡する時期・方法を双方で決めます。一定の間隔で連絡すれば契約できると考えず、何の確認をするための連絡かを明らかにします。
顧問先獲得の改善を進める順序

まず、自事務所で受けたい継続顧問の対象と提供範囲を確認します。ここが曖昧なら、先方と事務所の業務分担を整理する作業を優先しましょう。その内容が決まっていれば、紹介用の案内と顧問サービスページを並べ、異なる説明を直します。
相談後に提案へ進めない場合は、面談で現在の会計体制と求める支援を確認できているかを見直します。提案後に保留が続く場合は、確認した希望が業務内容と費用に対応しているか、開始条件に未確認事項が残っていないかを確かめます。一件の相談記録を申込みから提案までたどり、次の工程へ渡せていない情報を見つける方法が使えます。
相談の記録では、申込み、面談の実施、提案、契約の合意、業務開始を分ける方法を勧めます。契約へ合意した場合も、開始に向けた担当者、連絡方法、資料の受け渡しを整える作業が残ります。どこまで進んでいるかと、誰が次の作業を行うかを記録すれば、事務所内で引き継げます。
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