弁護士広告ガイドラインの禁止表現と公開前の確認事項

弁護士広告ガイドラインの禁止表現と公開前の確認事項

法律事務所のサイトや広告を更新するときは、掲載する文言に加えて、氏名・所属会の表示、事例の同意、送信方法、広告の記録まで確かめる必要があります。制作会社に任せている場合も、事務所の実態と合うかを担当弁護士が確認できるようにします。

弁護士広告の確認には、日弁連の現行広告規程と業務広告指針を使います。表現が事実と合っているか、受け手に誤解を与えないかを確認したうえで、依頼者情報の掲載条件、必要な表示、勧誘方法、保存事項を項目ごとに照合します。判断が残る掲載案は、原稿と運用条件をそろえて所属弁護士会に確認します。

この記事は、サイト、検索広告、SNS等を公開・更新する弁護士と事務所のWeb担当者に向けて、2026年施行の改正を含む確認事項を説明します。禁止事項と望ましい対応の違いを示し、制作業者と共有する確認資料と、公開後に保存する記録も説明します。

現行の広告規程と指針

弁護士広告のガイドラインを調べる際は、日弁連の「弁護士等の業務広告に関する規程」と「業務広告に関する指針」を合わせて読みます。禁止される広告、表示事項、広告方法、保存義務を規程で確認し、具体例と判断の条件を指針で照合します。

この記事は2026年10月3日に日弁連等の公開資料を確認し、2025年12月5日改正の広告規程と、2026年2月19日改正の業務広告指針に基づいています。主な対象は、日本の弁護士と弁護士法人が行うWebサイトや広告の公開・更新です。

2025年末の規程改正では、依頼者等の同意方法と未承諾の送信方法に関する規定が2026年4月1日、広告業者との契約等の保存に関する規定が同年7月1日に施行されました。古い解説の文言だけで判断せず、改正の施行日と現在の条文を照合してください。

規程と指針の位置づけ

広告規程は、禁止事項や表示・保存の義務を定める日弁連の会規です。業務広告指針は、その規程をどう解釈し、運用するかを示しています。検索語としての「ガイドライン」だけで資料を探すと、古い運用指針や第三者の解説も見つかるため、正式な資料名と改正日まで確かめます。

指針に示された例は、規制される全事例の一覧ではありません。載っていない表現でも、具体的な内容や表示方法によって規程に抵触することがあります。

一方、指針の「望ましい」という記述に従わなかっただけで、直ちに広告規程への違反と解釈してはならないとされています。ただし、他の行為等と併せて規程その他の規範に違反するかを判断する際には、その要素の一つとなることがあります。禁止事項、義務、望ましい対応を同じ強さで扱わず、それぞれの文言と適用条件を読み分けましょう。

規程第3条は、所属弁護士会の会則・会規に違反する広告も禁止しています。担当弁護士が所属会の現行資料や対象業務に関する条件を確認し、日弁連の全国共通の規程と合わせて判断する必要があります。

WebサイトとSNSの適用範囲

広告規程第2条は、自己や自己の業務を他人に知らせ、顧客・依頼者となるよう誘引することを主たる目的とする情報の伝達・表示を広告と定めています。有料の検索広告だけを指すものではありません。依頼を促す事務所サイト、動画、SNSの発信も、その内容と状況に応じて確認対象になります。

指針は、法律問題を解説する動画に作成者の弁護士名や事務所の連絡先を載せること自体は、必ずしも顧客誘引が主目的とは判断されないとしています。しかし、動画の最後に相談を促す文言がある場合や、その文言がなくても全体として依頼へ誘導する趣旨の場合には、広告に該当し得ます。「SNSだから対象外」「広告費を払っていないから対象外」とは判断できません。

また、外部業者が作った内容もそのまま採用するのではなく、事務所側で確認します。規程第8条は、第三者が行う規程に抵触する情報の伝達・表示への利益供与や協力を禁止しています。制作を任せる場合も、原稿と実際の表示を担当弁護士が確認する工程を設けましょう。適用範囲と第三者への協力については、指針の第2・第7に具体的な考え方があります。

広告文で問題になる表現

弁護士広告の見出し、写真、数値、注記を合わせて広告全体の印象を確認する図。

弁護士広告では、事実であることに加え、受け手にどのような印象を与えるかを確認します。規程第3条が禁止するのは、次の広告です。

  • 事実と合わない広告
  • 読者を誤った理解へ導くおそれがある広告
  • 誇張や過度な期待を生む広告
  • 読者を困惑させたり、過度に不安をあおったりする広告
  • 特定の弁護士等やその事務所と比較した広告
  • 法令、日弁連や所属弁護士会の会則・会規に違反する広告
  • 弁護士等の品位や信用を損なうおそれがある広告

これは第3条の禁止類型を要約したものです。実際の実績を記載していても、別の分野にも同じ経験があると思わせたり、同じ結果が得られると期待させたりする表示は問題になります。禁止単語を消すだけでなく、見出し、写真、数値、注記を合わせた広告全体を読んで確認します。

実績と結果への期待

訴訟の勝訴率は、規程第4条第1号で表示が禁止されています。計算した割合が事実であっても、勝訴率を広告に表示することはできません。実績の裏付けがあれば何でも掲載できる、という考え方を避ける必要があります。

相談件数を表示する場合も、何を数えた件数なのかを照合します。指針は、申込みだけで実際には回答していない相談や、弁護士が直接回答していないものを法律相談実績に含める表示を、虚偽の例として挙げています。受付件数を、そのまま弁護士が相談対応した実績として書かないようにしてください。

解決事例では、実際の結果と、読む人に期待させる結果を分けて確認します。ある事件で得られた金額を示し、「あなたも同じ結果を得られる」と思わせる表現は誤導の例です。架空の事例や、実際とは違う結果へ脚色した事例、実在する依頼者が関与していないお客様の声も採用できません。詳しくは指針の第3を照合します。

期待を高めるだけでなく、不安を使って依頼を急がせる表現にも注意が必要です。第二東京弁護士会の注意喚起は、「国が認めた借金減額救済措置」等の表示が、特別に有利な制度で簡単に減額できるかのような期待を生む点を問題視しています。担当分野の説明では、制度の条件を省いて効果だけを強調しないようにしましょう。

取扱分野と専門性

「専門」を「得意」に置き換えれば、それだけで規程に合うわけではありません。指針は、専門性の判断に客観性が担保されない現状では、専門家や専門分野等の表示を控えるのが望ましいとしています。これは、「専門」という単語をどの文脈でも一律に禁止するという説明とは区別します。

得意分野という表示は、主観的評価として受け取られるため、規程第3条第2号・第3号に違反しないものとされています。ただし、得意でないものを得意分野として表示する場合は、この扱いから外れます。経験が豊富でなくても取り扱いたい分野なら、「積極的に取り組んでいる分野」等の表示が望ましい例として示されています。

専門性の評価を付けず、実際の「取扱い分野」「取扱い業務」を伝える方法もあります。まず、現在受け付ける内容と担当できる範囲を具体的に書き、能力や経験の評価を加える場合は実態と照合してください。指針の第3の12・13は、「最も」「一番」「完璧」等の用語も文脈によって問題になるとしています。

他の事務所を名指ししなければ比較にならない、というわけでもありません。全体の表現から特定の事務所を指していると認められる場合は、特定の弁護士等との比較として判断されます。自分の事務所の取扱内容を説明する際に、他の事務所との優劣を含ませていないかも読み直しましょう。

費用と相談体制

料金の表示は、強調した金額と、実際に依頼者が支払う条件を合わせて確認します。例えば着手金をゼロと表示していても、受任時に手数料や管理料など別名目の金銭を受け取る場合、別途受け取る旨が明瞭に表示されていない広告は、指針で問題例とされています。実費を別途徴収する場合は、その旨を明記することが望ましいとされています。

「着手金○万円から」と書く場合も、実際には表示額を著しく超える着手金を受け取っていないかを確かめます。表示する金額とその条件を、事務所の報酬基準や請求内容と照合してください。広告の大きな文字だけを見て、支払いの条件を誤解しないか確かめてください。

相談体制も同様です。指針は、体制が整っていないのに常時直接対応してもらえると思わせる「24時間365日相談対応」を誤認の例に挙げています。フォームが常時送信できることと、弁護士がその場で相談に答えられることは別です。申込みの受付時間、弁護士が回答できる時間、予約が必要かを実態に合わせて案内します。費用と体制の条件は指針の第3の3に記載されています。

依頼者情報と解決事例の掲載条件

閉じた書類の写真調背景に事例掲載の条件を分けて確認すると示す章扉。

依頼者の名前や解決事例を掲載する際は、規程第4条のどの事項に当たるかを分けて確認します。顧問先・依頼者の表示、受任中の事件、過去に取り扱った事件では、例外の条件が異なります。

掲載する情報

原則

第4条に定められた例外の要約

顧問先・依頼者

表示できない

本人の書面又は電磁的方法による同意がある場合

受任中の事件

表示できない

依頼者の書面又は電磁的方法による同意がある場合、又は依頼者が特定されず利益を損なうおそれがない場合

過去に取り扱った事件、又は関与した事件

表示できない

依頼者の書面又は電磁的方法による同意がある場合。又は、広く一般に知られている事件か依頼者が特定されない事件であり、依頼者の利益を損なうおそれがない場合

現行規程では、同意の方法に書面だけでなく電磁的方法も含まれます。指針は電子メールの送信等を挙げています。顧問先・依頼者の表示に関する同意では、同意の範囲、有効期限など必要な事項を明示して得ることが求められています。事例の制作時にも、どの内容の公開に同意を得たのかを確認できるよう、掲載案と同意記録を対応させておくとよいでしょう。

同意を得ず、依頼者が特定されない例外を検討する場合は、氏名を消しただけで判断しません。指針は、実際に依頼者が特定されないかを個別具体的に判断するとしています。掲載する地域、時期、事情等の組合せから誰の事件か分からないか、依頼者の利益を損なわないかを担当弁護士が確認します。受任中の事件については、この例外に当たる場合も、指針は書面又は電磁的方法による同意を得るよう努めるものとしています。

表の例外に該当しても、広告全体が第3条に抵触してよいわけではありません。掲載条件を満たした事例に「同じ結果が得られる」と期待させる説明を付ければ、別の問題が残ります。規程第4条と指針第4を合わせて照合してください。

広告に必要な表示事項

第9条の基本表示として、弁護士は氏名と所属会、弁護士法人は法人名、法律事務所名と所属会を確認する図。

広告の内容を確認したら、誰の広告なのかが分かる表示も点検します。規程第9条は、弁護士と弁護士法人で必要な事項を分けています。事務所の名称や問い合わせ先だけで、規程上の表示がそろったと判断しないようにします。

所在地、営業時間、予約方法等も相談者の判断に役立つ情報です。ただし、これらの案内と第9条が定める必須事項は分けて点検します。また、通信手段で法律事務を受任する場合の広告には、第9条の2による追加事項があります。

弁護士と弁護士法人の表示

弁護士の広告には、氏名と所属弁護士会を表示します。職務上の氏名を使用している場合は、その氏名を用います。弁護士法人の広告には、法人の名称、主たる法律事務所又は広告に係る従たる法律事務所の名称、所属弁護士会を表示します。

複数の会に所属する法人では、主たる事務所が所在する地域の所属会、又は広告に係る従たる事務所が所在する地域の所属会を表示する扱いが規程にあります。弁護士等が共同で広告する場合は、代表する1名又は1法人について、その立場に応じた事項を表示すれば足ります。対象事務所と広告主体を先に決めて、第9条の各項に照合しましょう。

東京弁護士会の注意喚起も、事務所サイトの所属会表示がないものを違反広告としています。一方、登録番号の表示までは第9条で求められていないと説明しています。サイトの案内として載せる情報と、条文上必要な表示を混同しないことが大切です。

バナーには条件付きの扱いがあります。クリックして必ず表示されるページに、広告の責任者である弁護士等の氏名等と所属会が表示される場合、バナー自体にその表示を要しないと指針は定めています。「サイトのどこかにプロフィールがある」だけで済ませず、実際のリンク先と表示を確認してください。

通信手段による受任の追加表示

規程第9条の2は、電話、電子メール等の通信手段により法律事務を受任する場合について広告するとき、第9条の事項に加えて次を表示するよう定めています。

  • 受任する法律事務の内容と範囲
  • 報酬の種類、金額、算定方法、支払時期
  • 委任事務が終了するまで契約を解除できる旨と、中途終了時の清算方法

受任とは、法律事務の依頼を引き受けることです。相談を予約するフォームがあるという情報だけでは、その後にどの方法で受任するかは分かりません。実際の申込み、説明、委任契約までの流れを担当弁護士が確認し、第9条の2が対象とする広告かを判断します。

対象になる場合は、費用の一部だけでなく、算定と支払時期、途中で契約が終了したときの扱いまで案内します。制作担当者に契約条件を渡し、広告の説明と事務所が使う委任契約の内容に食い違いがないか照合してください。

電話やメッセージによる勧誘の条件

一般公開のサイトやSNS投稿と、相手を特定して直接送る広告は分けて確認します。広告文が同じでも、誰に、どの方法で届けるかによって適用される規定が変わるためです。

規程第5条第1項は、面識のない者への訪問・電話による広告を原則として禁止しています。法律事務の依頼を希望する者から請求があった場合等の例外は、同項ただし書に定められています。第5条の「面識のない者」は、現在・過去の依頼者、友人、親族、それらに準じる者以外を指します。

同条第2項は、面識のない者に承諾なくFAX、SMS、電子メール等を送信する方法による広告を禁止しています。指針はSNSのメッセージ機能等もこの対象とし、SNSで相互フォローや友達登録をしているだけでは、面識があることにも広告送信への承諾を得たことにもならないとしています。第1項のただし書に相当する例外を、第2項へそのまま当てはめることもできません。

診断ページ等で閲覧者が電話番号やメールアドレスを入力した場合も、入力だけで広告送信への承諾が得られたとは判断しません。入力が事件の依頼又は法律相談の申込みになる趣旨がページ上で明確であるなど、依頼者と解すべき特段の事情がない限り、面識のない者として扱われると指針は説明しています。

さらに第6条は、特定の事件の面識のない当事者・利害関係者に、その事件の依頼を勧誘する広告を直接届けることを原則禁止しています。公益上の必要による所属会の承認など、同条の例外も別途確認します。不特定多数向けの一般公開投稿は、第6条の直接到達する方法には当たりませんが、表現内容についての第3条等の確認は残ります。判断には規程第5・6条と指針第5を用います。

送信を外部業者に任せる場合も、対象者との関係、承諾の内容、送信手段、広告文を事務所で確認できる状態にしてください。一般投稿の確認を終えたことを、そのままDM送信の確認済みという扱いにはしないようにします。

公開前の確認と広告記録の保存

掲載内容、委託の記録、同意の記録を別々の書類として残す図。

公開前には、原稿が正しいかだけでなく、実際に表示される広告と事務所の運用を照合します。次の手順は、ここまでの規程確認を制作作業に反映するための提案です。確認担当と保存先を決めて、事務所と制作業者が同じ掲載版を扱えるようにします。

事務所と制作業者の確認資料

最初に、掲載するサイトの本文、検索広告の短い文面、バナー、動画、SNS投稿とリンク先をまとめます。本文の注記が広告画像では省かれていないか、スマートフォンでも料金条件や氏名・所属会が読めるかを、公開予定画面で確かめます。

次に、経歴・実績の確認資料、報酬基準、相談体制、掲載情報に対応する同意記録を原稿と照合します。外部業者には、確認できた事実と公開する範囲を渡し、未確認の実績や利用者の声を追加しないよう共有してください。

送信を行う広告なら、送信先の選び方、相手との関係、承諾の記録、送信方法も確認します。委託する場合は、業務範囲、配信方針、報酬の条件、再委託の有無、広告を修正・停止する連絡方法を契約資料とともに整理します。指針は、第三者サイトを広告やSEO対策に利用する場合、再委託する場合も、配信方針や報酬発生の条件等の資料保存を求めています。

担当弁護士は、所属会の会則・会規や広告についての相談方法も確認します。判断が残る場合は、単語だけを質問するより、広告案、リンク先、事務所の実態、送信方法、疑問となる条文をそろえて照会すると、何を確認したいかを具体的に伝えられます。これは公開前確認の進め方の提案であり、すべての広告に一律の事前承認が必要とする説明ではありません。

規程第12条には、所属会による記録提出等の調査や違反広告の中止・排除等に関する規定があります。確認の根拠を事務所側でも説明できるよう、資料と記録を残しておきましょう。

公開後の記録と変更への対応

規程第11条は、広告が終了したときから3年間、広告物又はそれに代わる記録、広告の日時・場所・送付先等の方法に関する記録を保存するよう定めています。現行条文には、広告業者との契約内容を証する書面・電磁的記録、契約に係る入出金の記録、第4条の同意を証する記録も含まれます。

Web広告は、リンク先URLを含めたデータや印刷物を保存します。動画など印刷では残せないものは、データを保存できる方法を用います。URLを一覧にするだけでなく、その時点で何が表示されていたかを後から確認できるようにしましょう。

指針は、重要な広告事項を変更したとき、又は画面の一新や掲載内容の大幅な変更等によって同じ広告とは認められなくなったときには、変更前後のデータを両方保存すると定めています。細かな事項を頻繁に書き換える場合は、変更前後を同じ広告とみなす扱いもあります。料金、取扱範囲、実績等を変える際は担当弁護士が変更の内容を確認し、以前の版を上書きするだけで済ませないようにしてください。

契約関係の保存は、書類の名称だけで対象を判断しません。指針は、契約書のほか、見積書、発注書、請求書、契約内容についてのメール等も例示しています。配信画面だけを保存して終えず、業者に委託した内容と支払いも追えるようにします。保存の詳細は規程第11条と指針第8の4にあります。

2026年7月1日施行の改正には経過措置があります。広告業者との契約内容の保存に関する追加部分は同日前に終了した広告に、契約に係る入出金記録の保存に関する追加部分は同日前の入出金に適用されません。この経過措置を、改正前から定められていた広告物や同意記録等の保存義務まで免除するものとして扱わないよう、附則と対象記録を照合してください。

公開後も、料金、所属、受付体制、取扱業務が変わったら、該当する広告とリンク先を見直します。問い合わせが増えたことは、広告規程への適合を証明するものではありません。集客の結果と、表現・表示・記録の確認はそれぞれ管理しましょう。

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